平成5年度は実験装置の整備と古地磁気強度測定のテストランをおこなった。交流消磁装置は120mTまで安定して出力し、トップフィールドまでの増加率とそこからの減衰率を一定にした。これは、ARMを付け加えて検討したときに、特に減衰率が大きいとARMが有意に小さくなるからである。また、ARMを比較対象のNRMないしTRMとほぼ同じ方向につけることができるようにし、異方性の自動補正をした。電気炉での設定温度での加熱時間は、2回加熱法の場合、1回目は10分、2回目は20分である。加熱時間を短縮したことで、加熱前後のARM比の1、2回目の差が小さくなった。平成6年度は主として第四紀火山岩に二回加熱ショー法を適用した。試料は、大山火山(安山岩と石英安山岩)、アンデス地域(安山岩)、中国大同地域の火山岩(玄武岩)である。いずれもブリュンヌ期(約70万年前から現在)に生成した溶岩である。2回加熱でのTRM1/TRM2^*の傾きが1±0.05におさまるものは全部で13試料であり、成功率は13/32、約4割であった。今回の研究で得られた古地磁気強度は現在の磁場強度の半分以下であるものが多い一方、2倍程度の強度を示すものもある。VDMに換算してもこの傾向が見られ、これまで平均的なVDM値と思われている8×10^<22>Am^2付近にはあまり分布せず、その1/2および2倍付近に分布する。したがって、古地磁気強度(第一次近似としては双極子磁場強度)は、正規分布や対数正規分布のような一つの平均値と偏差をもった単純な変化ではなく、2つのピークを示すような統計母集団である可能性がある。さらに、本研究では磁場逆転時の非双極子・双極子磁場の相対的強度の変化を地磁気方向(堆積岩の測定)の周期的変化から議論した。結果として100年程度の短周期変化が卓越しており、逆転やリバウンドも200-300年程度で完了することから、逆転時の地磁気は10^2年オーダーの変化が特徴的であろうと考えられる。
|