風及び水温・塩分の年平均気候値を境界条件とし、高解像度(0.5^゚×0.5^゚)の三次元数値モデルを用いて診断的に数値実験を行った。また得られた流動場に標識粒子を投入しオイラー・ラグランジュの手法により追跡することで、海水の運動を調べた。その結果、南極周極流の多重の前線構造及びそれを横切る海水の南北輸送について以下のことが明らかになった。 1.南極周極流の強流帯に伴う二本の密度前線である極前線と亜南極前線は、特徴的な海底地形に伴い顕著に見られるが、決して周極で連続して存在するわけではない。このことはこれらの前線が周極に存在するというこれまでの認識と大きく違っているが、最近の観測結果とも良い対応を示している。 2.前線の不連続性に対応して南極周極流の強流帯も連続には存在しておらず、不連続な海域を通して海水の南北輸送が行われることが明らかになった。 3.流動場の変動は、特徴的な海底地形の存在する海域、すなわちアフリカ、オーストラリア、ニュージーランドの南方海域及びドレイク海峡で顕著にみられ、そこでの前線の変動も大きい。従って、ここでも2.で述べた海域とは別に顕著な南北輸送を引き起こす。
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