研究概要 |
1993年夏季に水稲群落内外に二組の小型超音波風速温度計と炭酸ガス・水蒸気変動計を設置して,運動量,炭酸ガス,水蒸気,顕熱等の乱流輸送の測定を渦相関法によって行った。また,歪ゲージによる植物体の揺れの測定,サーモトレーサによる群落の表面温度分布の測定によって穂波現象の定量的な把握を行うために観測を行った。1993年7、8月には岡山県南部においても日照不足が心配されたが、水稲の収量は平年を少し下回っただけであると言われている。7月下旬頃から開始し、生育段階に応じて水稲群落の観測を断片的に行い、デジタル記録として保存した。 観測は晴天時ばかりでなく曇天時にも行い、雨天時にも若干の資料が得られた。また、台風7号、13号の影響を受けて強風が吹き、9月4日早朝には6m高度の瞬間最大風速が25m/sを超えた。これらの強風時に超音波風速温度計と歪ゲージによる測定を試み、揺れと風速との関係についての資料を得ることができた。観測資料を現在解析中であるが、強風に伴って植物体が激しく揺れることを自記記録から明かにすることが出来た。 これらの観測と併行して、以前に倉敷で行った観測資料を利用して、イネの植物体の揺れと群落内部の光量の変動の解析を行い、光量の変動が揺れに比例し、また風速の二乗に比例して増加することを明かにした。また中国のオアシスのコムギ群落内外の炭酸ガス、水蒸気、顕熱の乱流輸送量の測定結果と群落微気象のモデル計算との比較を行い、風速が強くなると下向きの顕熱輸送が生じる現象を数値シミュレーションによって再現することができた。さらに、携帯用光合成蒸散測定装置を用いて測定された個葉の光合成・蒸散量と群落内外の輸送量との比較を行うとともに、チャンバー法の問題点についても検討した。
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