1993年8月5日から7日にかけて、東シナ海中央部の大陸棚縁辺部において、CTDによる水温・塩分の鉛直分布測定、MSPによるエネルギ-逸散率、水温、塩分の鉛直分布測定を行い、またそれに並行して電磁流速計を6層に係留して流向流速と水温の連続記録を得た。観測点付近では海底から10m前後のところに躍層が形成されており、海底混合層の厚さは薄かった。また、その躍層の上には中層混合層ともいえる厚さ20〜30mの密度勾配の小さい層が形成されていた。この中層混合層におけるエネルギー逸散率の大きさは非常に大きく変動しており、表層混合層と同程度の大きさになっているときと、それより2オーダーも小さくなっているときとが観測された。これは表層混合層で常に乱れが大きいのとは対照的に、中層混合層では鉛直混合を助長する乱れは間欠的に起こっていることを示唆するものである。また、CTDによる観測時に海底近くの層から採水した海水を濾過して得た懸濁物量のデータからは、海底混合層付近での懸濁物量とエネルギー逸散率とが対応していることを示唆する結果も得られている。 一方係留計による測定では、さまざまなスケールの変動成分が観測された。20〜30分程度の周期を持った変動が頻繁に観測され、これは内部波によるものと考えられる。また、10分より短い時間スケールを持った変動も観測され、これは波の形にはなっておらず、短いスケールの乱れによるものと考えられるが、この変動が特に海底に近い層では、潮汐周期の変動に対応している傾向も認められ、海底混合層の形成について考える上で興味あるデータである。
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