1994年8月4日から6日にかけて、東シナ海中央部の大陸棚縁辺部において、CTDによる水温・塩分の鉛直分布測定、MSPによるエネルギー逸散率、水温、塩分の鉛直分布測定、さらにサーミスタチェーンによる水温の微細構造の変動の測定を試みた。またそれに並行して電磁流速計を6層、アーンデラ流速計を2層(うち1層は欠測)に、それぞれ6m間隔に係留して海底直上部における流向流速と水温の連続記録を得た。観測点付近では海底から40m前後のところに躍層が形成されていた。また、前年度観測された中層混合層は、今回の観測では明瞭ではなかった。 係留系による観測では、さまざまなスケールの変動成分が観測された。海底付近で比較的強い南西向きの平均流が観測され、斜面域の海底混合層では、黒潮と反対方向の流れであることが注目される。1993年8月の観測と比較して、海底混合層内の乱れは大きかった。海底付近で比較的強い流れがあったことに関連していると考えられるが、1993年と同様、内部波の砕波によると思われる乱れもしばしば観測された。しかし一方、サーミスタチェーンによる観測では、砕波によって生じたと思われる水温の逆転構造はほとんど見られず、内部波の砕波の具体的な証拠を見いだすことはできなかった。 MSPによって観測されたエネルギー逸散率εの値は、中層以深では、大きいところで10^<-3>cm^2s^<-3>程度であったが、係留系による乱れの大きいところとの関連は明瞭でなかった。ただ、このεの値を用いて、乱流の持続時間を見積もると、単位質量あたり10cm^2s^<-2>の乱流エネルギーに対し、およそ3時間程度となる。これは係留系の観測から得られた乱れが、薄いそうであるにも関わらず、比較的長く持続することと対応していることも考えられる。
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