1.大気・海洋系内の偏光を考慮した多重散乱計算のプログラム開発を行った。風波のある海表面を近似するCox-MunK海面モデルを導入し、凸凹のある海表面の反射関数を計算し、この結果と大気の反射関数、伝達関数をAdding法で結合するプログラムを新しく開発した。なお大気中の多重散乱はDoubling and Adding法で計算している。 2.航空機POLDERデータの画像解析システムの開発を行った。これにより、画像中の任意の画素の放射輝度値、線偏光度、観測角、観測方位角を計算し、太陽の照射方向から散乱角と放射輝度、線偏光度に関する関係を波長バンド毎に作図することが可能となった。 3.航空機POLDER画像データの解析を1.で作成した多重散乱計算のプログラムを用いて行い、次の結果を得た。 (1)大気・海洋系内の多重散乱計算に基づき初めて理論的な航空機POLDERの反射輝度画像及び偏光画像の作成を行ない、観測画像データに見られる主な特徴はシミュレーションにより再現可能であることを示した。 (2)観測反射輝度画像に見られる半楕円パターンや偏光画像の散乱角依存性は大気の散乱特性によるものではなく、海表面の鏡面反射特性や偏光特性にその主な原因があることを発見した。 4.地球を対象とした反射輝度画像と偏光度を観測したPOLDERデータの解析はまだ開始されたばかりであり、今後に研究すべき課題が多く残されているが、観測放射輝度画像データからサン・グリッタ方向における海面波高、波面傾斜の分布図作成や海上風ベクトルを推定する手法の開発が来年度の課題と言える。
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