平成5年度には、南極昭和基地で得られた地上オゾン濃度とオゾンゾンデデータを同時に解析することにより、地上オゾン濃度が異常低下した時の対流圏におけるオゾン濃度分布を調べた。それによれば、濃度低下現象が地上から高さ1〜2kmにまで達していることが判明した。さらに、南極域で対流圏オゾン濃度が異常低下する現象が発生するための自然条件を明らかにするために、同基地で観測されている他の大気微量成分データや気象データとの関連を調べた。その結果、この現象が弱風時におこりやすいこと、しかしその時の気塊は基地活動に伴う大気汚染の影響を受けていないことが明らかになった。また、紫外線強度やオゾンホールとの関連も調べ、昭和基地上空のオゾン全量が低く、地上に到達する紫外線量が多い時にこの現象が起こりやすいことなどが明らかになった。 昭和基地に持ち込んだ濃縮装置付きガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)は昨年8月から順調に動作し続け、1993年10月6日11am頃から7日にかけてオゾン濃度の異常低下現象が昨年の春に始めて観測された時にもデータが取得できた。ただし、例年なら8月から9月にかけて数回起きたオゾン濃度の異常低下現象が昨年はこの時のみ1回しか起こらず、濃度低下も例年ほど大きくはなかった。 平成6年度は、ガスクロマトグラフ質量分析計データも含めた総合的なデータを用いて、南極の春季に出現するオゾン濃度低下現象の原因を追及する。
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