成層圏エアロゾルの光学的性質は、地球温暖化等に関連する成層圏の放射伝達特性を理解する上で極めて重要なパラメータの一つである。また、オゾン層の破壊に関係すると考えられているエアロゾルの粒径(表面積)等の推定においても極めて重要である。 本研究では、成層圏エアロゾル層の多波長のミ-散乱ライダーおよびラマン散乱ライダーを用いて同時に観測を行うことにより、成層圏エアロゾルの分布および光学的特性の高度プロファイルを導出し、ピナツボ火山噴出後のエアロゾルの粒径分布プロファイルの変化など成層圏エアロゾル層の挙動を解明することを目的とする。 今年度は、多波長のミ-散乱およびラマン散乱ライダーにより得られた信号から求められる消散係数と後方散乱係数の比の高度分布から、成層圏エアロゾルの粒径分布の導出の可能性について理論的な検討を行った。検討は、ミ-散乱理論によるモデル計算のプログラムを開発し、成層圏エアロゾルの粒径分布をlog normal分布と仮定した時、消散係数と後方散乱の比と粒子のモード半径とその分布の標準偏差の依存性を求めた。その結果、一波長の測定では、分布の標準偏差の値によってモード半径が大きく変化し、粒径分布を推定することは困難であるが、二波長以上での観測結果を用いれば、相似となる分布の標準偏差を求めることができ、これよりモード半径を推定できることが明らかとなった。
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