本研究では、MHDシミュレーションによる磁気圏尾部領域の磁場および電子密度のモデルを用いて、様々なプラズマ波動のレイトレイシングを行い、磁気圏尾部領域、特に、磁力線再結合によって生成されるプラズモイドの周辺およびその内部でのプラズマ波動伝搬特性を明らかにした。先ず初年度において2次元のプラズモイド形成のMHDシミュレーションモデルに基づいてレイトレイシングを実行し、次年度において2次元モデルを用いて行った解析を3次元モデルに拡張して、より現実的なモデルのもとでレイトレイシングを行う事ができるようにした。従来のレイトレイシングの手法では、電子密度および磁場密度のモデルは数学的な関数として定義されていたが、本研究では空間格子点上に定義された離散的な磁場および電子密度の値から、任意の点における磁場と電子密度の値、およびそれらの空間微分値を内挿法により求めるプログラムを新たに開発し、それに基づいてプラズマ波動レイトレイシングプログラムを実行した。磁気リコネクションが起こっている領域にプラズマ波動の励起源を想定して、3次元空間のあらゆる方向にレイを伝搬させて波動エネルギーの空間広がりの様子をレイ分布という形で求めた。これは3変数関数であり、それを効率よく可視化する手段が必要になるが、3次元グラフィックスシステム(AVS)を用いて、磁気圏尾部領域の空間構造とレイ分布を解析するプログラムモジュールを開発し、これにより、2次元モデルでは分からなかったY方向の伝搬特性を明らかにすることができた。特に、Rモードの電磁サイクロトロンモードの伝搬において磁力線とY方向に特異な伝搬を示すものが見つかっている。今後の研究課題としてレイ分布を周波数および励起源の位置および形状を変化させてることによりダイナミックスペクトルを作成して、科学衛星GEOTAILによるプラズマ波動観測と比較してゆく必要がある。
|