今年度は、房総半島とその周辺地域に広く分布する上総層群ならびに下総層群のシーケンス層序学的解析と採取試料の室内分析を中心に研究を行った.今年度の研究によって、解析谷・海底谷の形成とその埋積ならびに海底扇状地堆積物の発達過程の時空変化の特徴が明らかにされた.この結果、従来から国内外で広く利用されてきているVail modelとGalloway modelとの間に認められる特定の地層の発達時期や構成堆積相の特徴に関する相違点を取り除くことができ、これら2つのモデルを整合的に結びつけたモデルを組み立てることができた.また、上総層群の堆積シーケンスを構成する堆積相の砂組成の分析により、海進・海退サイクルにともなってそれぞれ特定の堆積相が発達し、砂組成もこれに対応して、周期的に変化することが明らかとなった.こうした砂組成の変化は、海進・海退サイクルに対応した陸源砕屑物の供給量の変化とこれにともなう火山砕屑物の相対的供給量の変化を反映しているもの解釈される.さらに、高周期堆積シーケンスの発達が堆積速度の変動に大きく支配されていることが、上総層群ならびにメキシコ湾周辺に発達する堆積シーケンスの解析結果を分析することによって明らかになった.この結果、堆積速度と高周期堆積シーケンスの周期との間にはフラクタル的関係が存在することが明らかになってきている. 今年度の研究成果を踏まえ、今後は、前弧海盆域の様々なテクトニック環境で発達する堆積シーケンスの形成過程をモデル化していく計画である.
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