本年度は、房総半島とその周辺地域の上総層群ならびに下総層群のシーケンス層序学的解析と採取試料の室内分析の他、宮崎地域、常磐地域の新生代後期の地層を対象としたシーケンス層序学的解析、ならびに試料採取を行った。特に、本年度の研究は、(1)堆積シーケンスの発達過程と前弧海盆の隆起、沈降様式ならびに氷河期海水準変動との関係、(2)堆積シーケンスの形成にともなう堆積システムの発達様式と砂組成の変動との関係、などを明らかにすることを主な目的とした。 新生代後期における前弧海盆域での高周波堆積シーケンスの形成は、氷期-間氷期に対応した氷河性海水準変動のほか、前弧海盆の隆起・沈降速度の時空変化にも大きく支配されていることが明らかとなった。さらに、前弧海盆のテクトニクスに対応した堆積速度の時空変化が堆積シーケンスの発達を大きく支配していることも同時に明らかにされた。すなわち、グローバルな氷河性海水準変動が支配的である新生代後期においても、高周波堆積シーケンスの時空変化に前弧海盆域のテクトニクスが大きく関わっていることが明らかとなった。 前弧海盆域では、海進-海退にともなって陸源砕屑物の海域への供給量が変化し、これに対応して火山砕屑物の相対的供給量が変化する。その結果、相対的海水準変動に対応した砂組成の時空変化が前弧海盆域で形成された堆積されたシーケンスに一般的に認められる。すなわち、海進期の堆積物には、陸源砕屑物の供給量の減少に対応して、火山砕屑物が相対的に多く含まれるのに対し、高海水準期の堆積物は、活発な陸源砕屑物の供給に対応して、火山砕屑物の相対量が減少する。こうした砂組成の特徴は、前弧海盆域で形成された堆積シーケンスを様々な時空スケールで細分し、その形成過程を解析する場合にたいへん有効な指標となりえる。
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