平成6、7年度をとおして、房総半島とその周辺地域に広く発達する鮮新・更新統上総層群・下総層群、ならびにこれらの地層とほぼ同時代の宮崎地域、常磐地域の新生代後期の地層を対象としたシーケンス層序学的解析、ならびに試料採取とその室内分析を行った.これらの研究により、以下の点が明らかとなった. 1.従来、国内外で広く利用されてきているVail modelとGalloway modelとの相違点は、開析谷埋積物と狭義のlowstand wedgeをともに海進期堆積体として位置付けることにより、整合的に結び付けることができる. 2.高周波堆積シーケンスの発達は堆積速度の変動に大きく支配されている.すなわち、堆積速度の増加にともなって、より短周期の堆積シーケンスが形成され、高周波堆積シーケンスの周期と堆積速度との間にはフラクタル的関係が存在する. 3.新生代後期における前弧海盆での高周波堆積シーケンスの形成は、氷河性海水準変動のほか、前弧海盆の隆起・沈降速度の時空変化に大きく支配されている.すなわち、グローバルな氷河性海水準変動が支配的である新生代後期においても、高周波堆積シーケンス発達の時空変化に前弧海盆のテクトニクスが大きく関わっている. 4.前弧海盆では、海進-海退にともなって陸源砕屑物の海域への供給量が変化し、これに対応して火山砕屑物の相対的供給量が変化する.その結果、相対的海水準変動に対応した砂組成の時空変化が堆積シーケンス内に特徴的に認められる.特に、様々な時間的スケールでの海進に対応して火山砕屑物をより多く含んだ堆積物が発達し、堆積シーケンスの細分に有効な指標となる.
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