本年度は、主に北部九州のアルカリ玄武岩について、本源マグマの発生、分化、噴出にいたる過程(magmatic process)の研究を行った。 1.東松浦玄武岩の詳細な火山層序にもとづいて、全岩主成分および微量成分の分析、構成鉱物の化学組成、Sr同位体組成を求めた。これらの、データの解析から、東松浦玄武岩は、マントル深部に由来するマントルダイアピルから生じたプレート内玄武岩マグマで、3回のマグマティックサイクル、すなわち3回のマグマ溜り内での分別結晶作用によって生成されたものであることが明らかになった。この成果は、極めて画期的なもので1993年10月にオーストラリアのキャンベラで開催された国際火山学会議で発表された。 2.北松浦玄武岩は、ソレアイトとアルカリ玄武岩が時間的空間的に密接に関連しており、類似した起源マントルの部分融解の程度の差によって生成されたことが明らかになった。これは、従来考えられていた成因と全く異なるものであり、学会誌に公表された。 3.五島列島最北端、宇久島はソレアイト質玄武岩からデイサイトまで分布しているが、これらの火山岩類は、ソレアイトマグマからの分別結晶作用で導かれたものであることが分かった。また、ソレアイトマグマは、アイスランドのplume-type MORBと極めて類似した性質をもっていることがわかった。
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