研究概要 |
今年度で北海道の3つの大規模カルデラ火山(洞爺・支笏・屈斜路)の系統的なサンプリング,主成分元素・微量成分元素の定量は終了した.現在,EPMAによる鉱物組成の定量,ICP-AESによる希土類元素の定量を継続している.これまでの成果としては次のようである. 1.カルデラ形成期および後カルデラ期のそれぞれのマグマの組成多様性には,マグマ混合プロセスが支配的である.2.後カルデラの火山群には,島弧マグマの特徴である,島弧横断方向の火山岩化学組成の水平変化が認められる.したがって火山毎に独立したマグマ溜まり(マグマ系)が存在していると考えられる.3.2の主たる原因は後カルデラ火山での混合マグマ端成分である玄武岩質マグマ組成にあり,珪長質マグマ組成は後カルデラ火山群相互で類似している.4.その玄武岩質マグマの主・微量成分および同位体比の後カルデラ火山での空間的な多様性は周辺地域での火山岩組成の広域変化と調和的である.4.後カルデラ火山群で活動した珪長質マグマはカルデラ形成時の珪長質マグマと類似している.5.カルデラ形成期から後カルデラ期までの珪長質マグマの時間変化に注目すると,LIL元素とHFS元素の比およびマグマ温度の規則的な増加が認められた. 次年度はカルデラ形成期のマグマ系の解明と上記の5の問題についてさらに検討し,大規模珪長質マグマの発生機構のおよびそれに伴う下部地殻の進化を解明する.
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