研究概要 |
平成6年度は特に,洞爺・支笏カルデラのカルデラ形成期噴出物の岩石学検討を行い,カルデラ形成期のマグマ系の復元およびカルデラ形成機構の考察を行い,前年度までの検討による後カルデラ火山と併せて,島孤におけるカルデラ火山のマグマ系の特徴を議論した。また前年度までの成果(島孤火山の広域変化・カルデラ火山の活動年代等)を学術誌に公表した。その結果明らかになったのは以下のとうりである。 1.カルデラ形成期:(1)マグマの組成多様性には,マグマ混合プロセスが支配的であるが,複数のマグマ混合トレンドが認められる。それらが同一層準に混在しての認められることから,カルデラ形成期に、複数の独立したマグマ溜まりから一斉・同時噴火が起こったと考えられる。(2)カルデラ形成時に存在した複数の珪長質マグマは,それぞれが独立に下部地殻の部分溶融で発生した。またそれとは別に,マントル起源の玄武岩質マグマが存在していた。(3)この複数マグマ溜まりの一斉噴火は,プリニ-式噴火から火砕流への移行,あるいは大規模カルデラ形成機構として重要である。2.後カルデラ期:(1)後カルデラ火山群でも,珪長質マグマと玄武岩質マグマのバイモーダルなマグマが存在し,それらの間のマグマ混合が主要なプロセスである。(2)特に玄武岩質マグマには,島孤横断方向の火山岩化学組成の水平変化が認められる。3.島孤におけるカルデラ火山:活動を通じてのマグマの噴出量・温度・定置深度の変化に着目すると,カルデラ火山においても、島孤成層火山で想定されているダイアピルモデル,深部(マントル)からの熱源の上昇・下降と下部地殻との相互作用,で説明可能である。つまり、大規模カルデラが生じるかどうかは、大量の珪長質マグマが生じるような下部地殻であるか否か,あるいは大型のマグマ溜まりが形成されるような応力場であるかどうかによると考えられる。
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