研究概要 |
今年度は火成岩については花崗岩ペグマタイトからの試料、変成岩については三波川変成岩の石英脈について、流体包有物の観察と炭素同位体の分析を行った。(1)ペグマタイト中のCO2流体包有物 ペグマタイトのCO2流体包有物の炭素同位体比を研究する目的は、花崗岩マグマに含まれるCO2の起源を探ることである。特にイルメナイト系列花崗岩とマグネタイト系列を比較し、堆積物混成の影響がδ^<13>C値に現れていないかどうかを検討した。分析したイルメナイト系列のペグマタイトは、福島県石川(-12.1〜-6.5)、茨城県妙見山(-15.4〜-9.3)、島根県馬谷城山(-19.7〜-12.1)、山梨県黒平(-11.8)、三重県宮妻峡(-17.7〜-12.7)である。()内はδ^<13>C値。一方、マグネタイト系列では山梨県乙女鉱山(-10.7)、長野県有明(-11.9〜-11.5)、岩手県崎浜(-12.1〜-6.5)、長野県和田(-10.9)、福岡県長垂(-21.3〜-13.4)からのペグマタイトを検討した。岩手県崎浜のCO2流体包有物のδ^<13>C値は他の岩体よりも有意に重い値が得られたこと、イルメナイト系列では-20〜-15%前後の軽い値を示すものがあること、が判明したが、現在までのデータからでは両系列ペグマタイトのδ^<13>C値が系統的に異なっているとは結論できない。典型的なマグネタイト系列ペグマタイトの試料が得られなかったので、今後さらにそれらのデータを増やす必要がある。(2)変成岩中のCO2流体包有物 高知県汗見川ぞいの三波川変成岩に産する石英脈の流体包有物の性質を研究した。水性流体包有物が卓越し、CO2流体包有物は高変成度域(黒雲母帯)から得られた試料にのみ認められた。泥質変成岩の基質に方解石を多産するにもかかわらずCO2流体包有物の産出がまれな事は、領家帯と全く対照的で、興味ある事実である。(3)新しい分析 流体包有物中のCO2,CH4の存在を顕微FT-IRをもちいて確認した。流体包有物中の水性流体の陰イオン組成を、イオンクロマトグラフにより分析した。
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