大陸衝突帯地殻の発展過程

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05640530
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 平島 崇男 京都大学, 理学部, 助手 (90181156)
• 研究分担者: 坂野 昇平 京都大学, 理学部, 教授 (30019468)
• キーワード: 超高圧変成作用 / エクロジャイト / コース石 / 超塩基性岩 / 蘇魯地域 / 中国

研究概要

今年度の前半は、山東半島東部、日照地域の超塩基性岩の岩石学的研究の論文化に力を注いだ。本岩体は主としてざくろ石と単斜輝石で構成されている非常に単調な鉱物組み合わせであったが、組織的には大変興味深かったので研究した。ざくろ石と単斜輝石はそれぞれ粗粒なポ-フィロクラストとマトリクスを構成する細粒にネオブラストに区分できる。偏光顕微鏡観察から、粗粒な単斜輝石は変形運動にともなって結晶の周囲から細粒のネオブラストに分解していく過程と粗粒な単斜輝石の一部には、ざくろ石がラメラ状に析出していることが読みとれた。また、X線マイクロアナライザーによる化学分析から、粗粒な単斜輝石のコアからリムに向かってAI含有量が減少し、リムの組成はネオブラストと同様であることが判った。これらの事実を総合して、この岩体は、上部マントル物質(低圧高温状態)が高圧中温を示す場(超高圧条件)に持ち込まれ変形を伴いなが再結晶した歴史が読みとれた。この原稿は、The Island Arc誌に投稿した。
年度の後半は、国際学術研究(代表:坂野昇平)で約2週間、中国山東省の地質調査に従事するとともに採集試料の整理を開始した。調査の主目的の一つは、Hirajima et al.(1993)Proc Japan Academy,が発見した変成花崗岩周辺の精密地質調査であった。4日間に渡る調査で、問題の岩体とその周囲の岩石との関係を押さえ、約150枚におよぶ新規採集試料の顕微鏡観察結果を加味して、500分の1スケールの精密地質図がまとまった。その結果、当該地域は超高圧変成岩の原岩組織が中国東部で最も良く保存されていることが判った。特筆すべき新事実は、岩石の結晶粒界から見いだされた末分解なコース石である。これは、世界で初めての例であり、論文化を急いでいる。

研究成果

• [文献書誌] 平島 崇男: "アルプスの超高圧変成作用" 月刊地球. 15. (1993)
• [文献書誌] Wang Q.,et al.: "Coesite-bearing granulite retrogressed from eclogite in Weihai,eastern China:A preliminary study" European Jour.Mineralogy. 5. 141-152 (1993)
• [文献書誌] Hirajima et al.: "Petrology of a jadeite-quartz/coesite-almandine-phengite fels with retrograded ferro-nyboite from the Dora-Maira Massif,Western Alps." European jour.Mineralogy. 5. 943-955 (1993)
• [文献書誌] Hirajima et al.: "Eclogitized metagranitoid from the Su-Lu UHP Province,eastren China" Proc.Japan.Academy,Ser.B. 69. 249-254 (1993)
• [文献書誌] Ishizaka et al.: "Rb-Sr dating for the Jiaodong gneiss of the Su-Lu ultra-high pressure Province,eastern China." The Island Arc. 3. 232-241 (1994)
• [文献書誌] R.Compagnoni and B.Messiga: "Guide-book to the field excursion,B1,High pressure metamorphism in the Western Alps" International Mineralofical Association, 148 (1994)
• [文献書誌] Compagnoni et al.: "Ultrahigh pressure metamorphism,Chapter 8." Cambridge University press(印刷中), (1995)