研究概要 |
本年度の研究では、主としてガンドルフィカメラで撮影された粉末写真を用いて格子定数を外挿法により精密に決定する際に問題となる誤差の検討を行い、ディフラクメータに匹敵する精度で格子定数を決定できる方法を確立した。概要は以下のようである。 ガンドルフィカメラで撮影された粉末写真をマイクロデンシトメータで読みとった後、プロフィルフイッティング法を適用すると、回折線位置は2thetaで0.01゚以下の誤差で決定できる。 プロフィルフィッティング法により、決定された回折線位置には,2theta=0゚の原点位置に含まれる誤差,カメラの工作及びフィルムの現象時の伸縮に起因するカメラ径誤差,カメラの中心からの試料の偏心による誤差,試料によるXせんの吸収に伴う誤差が考えられる。これらの誤差のうち,ガンドルフィカメラで通常測定する100mum以下の試料については吸収による誤差は無視できる。また,原点位置,カメラ径誤差に伴う2theta位置の誤差は2theta=0゚と2theta=180゚付近に記録される回折円錐の中心を求め,それぞれを2theta=0゚,2theta=180゚として補正することができる。 以上のようにして補正された回折線位置より外挿関数としてcos(^2)thetaを用いた外挿法によりシリコンの格子定数を計算すると5.4306(1)=の値が得られた。これはこれまでにシリコンの格子定数として報告されている5.430748(5)=に非常に近い値となっており,また,得られた格子定数から計算により求められた各回折線位置と測定回折線位置のずれは0.01゚以内に収まっている。このことからガンドルフィカメラを用いた格子定数の精度はディフラクトメータに匹敵するものであり十分に満足のいくものであることが確かめられた。
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