本年度の研究では、ガンドルフィカメラで回析パターンを撮影したとき、回析線が高角域に出現せず外挿法が適用できない試料についても精密な格子定数を得、また結晶粒径や格子歪みを推定するために、ガンドルフィカメラを用いた内部標準法による測定方法を確立した。概要は以下のようである。 (1)ガンドルフィカメラによる粉末回析パターンの撮影は50μm程度の微小結晶を用いるため、試料と標準物質とを混合することができず、標準物質は微小結晶の周囲に20μm程度の厚さで均質に塗布した。標準物質としてはシリコンまたはランタンの硼素化物を用い、塗布はアロンアルファに標準物質を分散させて行った。 (2)標準物質を用いてカメラ径誤差と偏心誤差を見積もり、目的とする試料の回析線位置を補正することによって、数十ppmの誤差で格子定数を精密に求めることができた。このことにより、対称性が低く低角域にしか回析線を示さない結晶についても格子定数を精密に求めることができるようになった。 (3)標準物質と目的とする試料の回析線の幅は、標準物質を試料の外側に塗布するため、標準物質でやや広くなるもののほぼ一致し、標準物質で試料の回析線幅を補正することによって、試料そのものによる回析線幅の広がりを求め、Hallプロットなどにより正確な結晶粒径や格子歪みを決定できることがわかった。
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