研究概要 |
平成5年度に引き続いて,試錐や地表から採集した泥質岩から花粉・胞子化石や不溶性有機物を取りだし,その輝度を顕微鏡に装着した画像処理システムで計測した。輝度測定で得られた最大値,最小値,平均値,標準偏差値,積分値,最頻値の中では,測定する花粉粒子等の大きさ,黄鉄鉱等の花粉粒子の包有物の影響を一番受けにくく,有機熟成指標となり得るのは,最頻値であった。そこで,各種花粉・胞子化石,不溶性有機物の輝度最頻値を測定し,その値を同一試料中に含まれるビトリナイトの反射率(Ro)と比較検討した。その結果,マツ属(Pinus)とツガ属(Tsuga)の花粉粒子,及び不定形ケロジェン(lumpy amorphous kerogen)の輝度最頻値が,ビトリナイト反射率とよい相関を示すことが判明した。特に,マツ属とツガ属の花粉粒子の輝度は,極めてよく似た熟成変化を示し,同一の熟成度では,ほぼ同じ値を示すことが明らかになった。 以上の検討結果から,マツ属とツガ属の花粉粒子の輝度最頻値を,第一の数値化した熱変質指標と考えた。これらの指標の応用例として,実際の基礎試錐において,コア中のマツ属とツガ属の花粉粒子の輝度最頻値を測定し,その値から石油生成帯を推定した。推定された石油生成帯の入口は,ビトリナイトの反射率から推定された石油生成帯の入口とほぼ一致しており,これらの指標の有効性が実証できた。これらの内容は,石油技術協会と日本地質学会での講演会で発表した。
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