環境庁の酸性雨全国調査によると日本の降雨pHは森林・湖沼・建造物に大きな被害を出している欧米と同程度である。しかし、日本では排ガス規制等によりイオウ酸化物の排出量が年々減少しており、酸性雨の影響は顕在化していないと言われている。一方、アジア諸国では大気汚染物質の排出に対する対策が進展していない。東北地方を通過する偏西風は中国東北部や極東ロシアといった工業地帯を経由したものであるが、環境庁の調査では東北地方の観測点は2ヶ所のみである。 本研究は東北地方での観測の空白域を埋めるため東北地方各地に観測点をもうけ、湿性と乾性降下物を採取して化学成分を測定すると共に、含まれている硫酸のイオウ同位体比を測定することによって酸性降下物であるイオウ酸化物の起源を明らかにしようとしたものである。そのため日本海に面した酒田・奥尻島、内陸の新庄・山形・米沢、太平洋に面した大船渡に降雨採取点をもうけた。また、鶴岡と山形にハイボリュームエアサンプラーを設置してエアロゾルの採取を行った。 この結果、日本海に面した酒田・奥尻島、内陸の新庄・山形・米沢、太平洋に面した大船渡のイオウ同位体に夏低く冬高くなる季節変動があることが明らかとなった。また、観測点の緯度が高くなるほど冬季のイオウ同位体比が上昇することから、イオウ同位体比の年間変動幅が大きくなることが明らかとなった。大陸ではバイカル湖以東でイオウ同位体比の高い降雨が観測されている。日本では偏西風の経路から北に行くほど大陸のより北側を通過している。これらのことから、東北地方では大陸北部の影響が強く受けていると考えられる。
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