同位体比の測定、速度論的同位体効果を見積もるための模擬実験などを進め、以下のような知見を得た。 主として北陸の大気中のN_2Oについては、これまでの観測結果と同様、窒素・酸素両同位体比とも濃度との間に負の相関があった。夏季の酸素同位体比に大きな変動がみられ、生成過程のなかで、とくに硝化反応による生成が活発である可能性が示唆された。また、非常に嫌気的な湿地帯の停滞した大気中のN_2Oは、濃度の減少とともに窒素・酸素両同位体比とも上昇し、N_2Oの還元に伴う速度論的同位体効果が一日の間に顕著にみられることが分かった。 大気中のメタンについて、初めて水素同位体比が測定された。予想されたように、各生成源の水素同位体比と比較して、重水素が濃縮されており、OHラジカルとの反応による消滅のさいの速度論的同位体効果(この水素同位体効果も早急に求めなければならない)を反映していると考えられた。 N_2O濃度の精密測定システムを構築するには至らなかったが、既存の真空系システムを改良して、定量を行った。精密測定システムの構築は実現する努力を継続する。同位体比の測定に関しては、N_2O、メタンともこれまでに確立した方法にさらに手を加え、高精度の測定を可能にした。 速度論的同位体効果を求めるため、模擬実験を開始している。とくにN_2Oについて、硝酸還元系における生成の同位体効果を求めるさいに、N_2Oの還元による消滅も同時に起こり、両者を完全に分離することが実験的に難しいことが分かった。これは、様々な条件で実験を行い、詳細な解析を行うことで、両者を分離することが可能であることが分かり、解決できる見込みが立った。
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