1.N_2Oの窒素同位体比の変動は、海水・陸水などへの溶解や、大気中の窒素分子などとの同位体交換などの平衡過程ではなく、生成・消滅のさいの同位体分別で決められていることを確認した。一方、酸素同位体比が40‰強と非常に高い値に保たれ、地域的な変動があることから、水との間の酸素同位体交換か、生成時の環境水の影響が強く示唆された。来年度以降は、特に後者に重点をおいて研究を進める予定である。 2.CH_4の炭素同位体比は、生成のさいの同位体分別で決められている。一方、水素同位体比は、低緯度ほど高いという、緯度方向に大きな変動を示し、生成時の環境水の同位体比を反映していることが、明らかにされた。本学に既設の加速器質量分析計による、CH_4の^<14>C濃度の測定のための技術的な準備を進めており、一部、測定を始めている。 3.N_2Oの酸素同位体比と、CH_4の水素同位体比に関係の深い、環境水の水素・酸素同位体比の測定を行った。高緯度ほど、低い値を示す一般的な傾向がみられた。湿地帯から生成するメタンの水素同位体比と、環境水の水素同位体比に強い相関関係がみられ、両成分の循環を解析する有効な指標となることが、明らかにされた。 4.前所属機関において、導入できなかったECD検出器つきガスクロマトグラフについては、現所属部局においても、法的な整備がされていなかった。放射線取扱主任者資格の取得と、放射線障害防止の内規制定などの準備を行い、来年度は導入が可能となった。これによって、N_2O濃度の精密測定にむけた環境が整備された。
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