炭素同位体比の累体構造を調べることによって、高変成度の岩石の形成のときに関与した、流体の起源や移動様式などを研究することに役立つことを示した。花崗岩のペグマタイトの黒雲母と共存する石墨の炭素同位体比の分析から火成作用のときの炭酸ガスから石墨が結晶成長して行く過程ではあまり大きな同位体分別を起こさないことを測定データから明かにした(論文2).Wada(1988)の微量安定同位体比の分析方法を使って、インド最南端のグラニュライト相変成岩であるチャルノッカイトに含まれる結晶石墨の炭素同位体の累体構造を求めた論文である。チャルノッカイトは先カンブリア紀に、地殻下部或いはマントルから炭酸ガスの流入によって形成されたとするモデルが提唱され、これを証明するのには炭素の同位体比を測定する必要があり、この結果が第1報である。チャルノッカイトに含まれる石墨はマグマ起源の同位体比を持つ炭素であり、石墨形成時には炭酸ガスから閉鎖系で石墨結晶成長をしたことが示された。南インドのケララ州を中心とした地域に特徴的な、コンダライトと言うアルミナ質の珪長岩を多量に含む変成岩類は、結晶度のよい石墨が普遍的に含まれている。この中には一部チャルノッカイトに変化しているものもあるが、変成岩に含まれる石墨の起源とその役割を炭素同位体比の分析から明かにしたものである。生物起源の炭素とマントル或は火成起源の炭素の2種類が同位体測定の結果からはっきりわかり、産状と同位体比が調和的であることも明らかにした(論文3)。南インドはかつてのゴンドワナ大陸を作っていた南極大陸、スリランカ、マダガスカル、アフリカの地質と緊密な関係にあり、変成作用も共通したものがある。石墨の炭素同位体の一連の研究成果をふまえ、石墨の産状とその同位体を整理し、地殻深部の流体の起源についての現在までの結果をまとめた。石墨の炭素同位体比の結果から、流体の移動様式に南インドに特有な結果が見られ、今後各大陸に分散した大陸破片の同様な研究によって大陸の特徴が区別できるようになると思われる(論文6) 地下深部で炭酸ガス、水などの流体成分はどのような化学的な形で、どのようなメカニズムで移動集積をしているであろうか。変成石灰岩中の接触境界において結晶粒界と結晶内部で炭素と酸素の移動のメカニズムがそれぞれ異なり、それは、水と炭酸ガスの移動メカニズムが違うことを炭素と酸素の同位体比の精密測定によって明らかにした画期的報告である。この論文は、国際会議のExt.Abstractであり、本文は現在投稿準備中であるが、重要であるので加えた(論文4)。以上のような結果は、1994年度から1995年度にかけて公表される。
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