新第三紀に東アジア東縁に発達したリフト系の活動が日本を島弧たらしめた。その過程を私達は日本海の背弧海盆拡大として理解しようとしている。これに伴って島弧下のマントルも進化した。その進化の痕跡は火山岩の組成に包含されていると考え、この研究を計画したのである。幸にして本研究を通じて、私達は多くの重要な知見を得ることができた。それらの概要は以下の通りである。 i.これまでの研究結果に加えて、北海道西部地域からの古地磁気データをもくわえて検討したところ、長さ約500kmの東北日本ブロックは1500万年に46°反時計廻りに回転した。これに対して0KPのデータから、あたかも20Maに日本海が形成したかの如き主張もあるが、それは日本海底の玄武岩の放射年代測定の困難さを物語っているものであり、本研究の信頼性を損なうものではない。 ii.カムチャッカの第四紀島弧火山岩の分析結果のうち、主要元素と微量元素については東北日本・伊豆・サンギヘ等で得た規則性が成り立ち、海溝側から3つの火山列が識別できた。しかるに、SrやNd同位体ではそのような規則性を検証することができなかった。これについて鉛同位体組成を測定して、さらに考察、検討を進めている。 iii.東北日本の第三紀以降の火山岩の主要元素組成の変化を検討したところ、日本海形成を挟む20Myの間に、海溝側と背弧側では異なる変化を遂げたことが明らかになった。 iv.東北日本の第三紀火山岩のRb-Sr年代測定の計画は、研究計画年度内には完成できなかった。しかしSrスパイクの逆定量も完了したので、今後この計画を本格的に進める。また鉛同位体組成の測定も軌道にのせることに成功した。Rb-Sr系と共に鉛-鉛法による年代測定も試みつつある。
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