研究概要 |
本研究の目的であるガラス電極法に代わる新たな高精度pH測定法の開発について,平成5年度に装置の組立,その性能評価を行なった。 pH指示薬としてチモールブルーを採用し,その酸解離定数(pKa)は既に申請者によって精密に決定されているので(Anal.Chem.,64,2720-2725,1992),その値を用いてpHを算出した。その結果,極めて高精度にpHを測定出来ることが明らかになった。即ち,イオン強度0〜3,温度25〜65℃の溶液で,本法の分光測光誤差は±0.0000066pHであった。また,チモールブルーの酸解離定数の精度を考慮しても,その測定精度は±0.0007pHと推定された。このことから本法が高精度pH測定法として有効であると判断し,亜ヒ酸の酸解離定数の精密測定に本法をpH検出法として適用し,実用的にも十分使用できることを示した。その結果についてはAnal.Chim.Acta誌(印刷中)に発表した。 本法では予めpH指示薬の酸性及びその共役塩基性種の基準吸収スペクトルを測定する必要がある。しかし,海水では強塩基性でマグネシウムの加水分解物が沈澱するために,その測定は困難となる。しかし,海水と同程度のイオン強度に調製た塩化ナトリウム溶液を用いることで基準スペクトルを測定するが出来た。実際の測定においては基準スペクトルと実試料の測定でチモールブルーを同一濃度にすることは難しい。これは吸収スペクトル測定後,データ処理の段階で等吸収点における吸光度の値を用いて補正した。 平成6年度は海水のpH測定に本法を適用し,その有効性を検証し,本法と従来のガラス電極法についてpHの測定精度,正確さを比較検討する。
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