1.我々が測定可能な量であることを示した波束相関関数より全領域のポテンシャルを求める方法を開発した。相関関数(波束の時刻を指定するtと波束を励起・終状態別々のポテンシャル上で走らせた時間τの二変数を持つ)をτに関してフーリエ変換すると、時刻tの波束から終状態へのある種の吸収スペクトルが得られる。中間状態と終状態のエネルギー差がtの関数として与えられる。この様なスペクトルより波束の中心位置(波束の幅がポテンシャルの変化に比べて小さければ古典軌道に対応)における両状態のエネルギー差が求まるので、古典力学を使って逆にポテンシャルを決めることが可能である。時間依存吸収スペクトルの形を満たすようにポテンシャルを決める種々の方法を開発中である。非断熱遷移による解離とともに核間距離が延びたり縮んだりする周期運動も現れるNaIを取り上げ、解離量や波束の中心運動を相関関数より求めることを行った。 2.無輻射過程へのパンプ-プローブ法の応用の可能性を探り、以下のことを明らかにした。暗電子状態に移った波束をプローブ光によってイオン化することを想定する。パンプ光との時間差の関数として与えられるイオン化のシグナルをフーリエ変換することによってどの振動モードにどれほどのエネルギーが流れていくかが判明する(accepting modesの決定)。暗電子状態の振動構造を決定する上でも有用な方法である。パンプ光のエネルギーを変えることによって非調和性やモード間結合に付いての知見も得られる。
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