希ガスを液体ヘリウム温度に冷却して作成した透明な結晶に、単一モードのYAGレーザーの第二高調波(532nm)を照射し、希ガス原子の3次の非線形感受率から発生する真空紫外光(177nm)の検出を試みた。希ガスとしては、最も大きな非線形感受率を有するキセノンを選択した。発生する微弱な真空紫外光を選択的に検出するために、今年度の新しい装置として、可視光カット真空紫外光透過フィルターとソーラブラインド型光電子増倍管を組合わせた光学系を高真空実験装置の中に製作した。実験結果は、入力光パワーの2.5乗に比例する出力特性が得られた。また、1光子をパルスカウントする実験条件を作り、その変換効率を決定することができた。また、入射光の偏光を変えても結果は変わらなかった。しかしながら、実験上の問題点として、入射レーザー光のエネルギー密度を上げると、結晶が容易に損傷してしまうこと、および、検出系をも損傷してしまうことから適切な光学系を検討する必要がある。また、検出器の光電面での多光子過程を区別する必要もある。 一方、希ガス低温マトリクス中に特定分子をドープし、光エネルギー変換に有力なエキシマ分子を生成するための基礎実験としてアルゴン結晶中の窒素分子、酸素分子の光励起と緩和過程の追跡実験を開始した。得られた実験結果を正しく理解するためには反応中間体である原子の濃度を直接モニターする必要性があることを認識した。その手法として赤外の吸収法、あるいは紫外レーザー多光子励起蛍光法を用いた測定実験の可能性を検討した。
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