気相の分子分光法のデータから分子内ポテンシャルに関する情報を十分に引き出すために、解析ソストウェアをワークステーション上に移植・構築し、分子ペクトルの解析に使用した。そのためにワークステーションとFORTRANコンパイラを購入し、これまで大型機上で開発してきた、分子定数からスペクトル線の波数を計算するプログラムおよび帰属スペクトル波数の最小二乗解析プログラムの移植と、新たなプログラム機能の追加とをまず行なった。これらを使用した成果について、以下に記す。 1.従来のC_<2V>対称分子のフェルミ・コリオリ相互作用の解析プログラムをC_S対称分子へも適用可能とするために、相互作用ハミルトニアンに現われる項を対称性の視点から理論的に検討し、成果を発表した。これをもとにプログラムを修正・拡張した。蟻酸分子のnu_7、nu_9バンドの高分解能赤外スペクトルを国立天文台野辺山宇宙電波観測所のフーリエ分光計にて測定した。これと以前に城西大学機器センターにおいて測定した半導体レーザースペクトルとを併用して、上記のプログラムによるコリオリ相互作用の解析を進め、現在も継続中である。 2.これまで希ガス2原子分子の原子間のvan der Waals力をSPEポテンシャルの形で精密に求めるプログラムを大型機上で開発してきたが、今回のワークステーションの導入により計算時間に事実上の制限がなくなったため、数値積分のためのきざみの細かさとエネルギー行列の大きさとについて必要十分なところまで拡張して検討するどとができた。また、これまでよりも高い量子数の基底で行列要素計算をするとオーバーフローが起こることが明らかになり、それを解析するためのプログラムの改訂を併せて行なった。以上を基礎にAr_2分子の電子基底状態の解析を進め、そのSPFポテンシャル関数を求めた。成果発表のための論文を執筆中である。
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