研究概要 |
先に申請者は、2-シクロペンテノンアセタール(1)をジエノフィルと共に加熱するとin situに生成した開環ジエノールエーテル体(2)がジエン成分としてDiels-Alder反応に組み込まれ、付加体(3)のアセタールへの再閉環を経て、2-ノルボルナノンアセタール類(4)が一段階で合成できることを見い出した。本研究では、このin situジエノールエーテルをジエン成分とするDiels-Alder反応を一般性のある簡便な有機合成手法として確立することを目的として、さらにいくつかの基質の反応を検討した。ここで明かになったことは以下のように要約される。 1.1および5-8の相対反応性が5:1:6:7:8=10.3:1.0:0.2:0:0であったことから、この反応にはα,β-不飽和アセタール構造が必須であり、またアセタール環としては5員環よりも6員環の方が反応性が高いことが示された。 2.9(120℃)および10(150℃)も若干より高い温度を必要とはするが、1(70℃)と同型式の反応を行うことを明かにし、この反応が一般性を持つことを確認した。 3.ジチオアセタール(11)も酸素類縁体と同型式の反応を行うことを見い出した。ここに含まれるジチオアセタールと開環ビニルスルフィドとの熱的平衡過程はこれ迄に前例のない未知過程であったので、中間体の介在をスペクトル分光的に確認し、この機構に対する裏付けを与えた。
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