先に報告者は、2-シクロペンテノンアセタール1を加熱条件下にジエノイルと処理するとin situに生成した開環ジエノールエーテル2がジエン成分としてDiels-Alder反応に組み込まれ、付加体3のアセタールへの再閉環を経て2-ノルボルナノンアセタール類4が一段階で合成できることを見い出した。類似のケト-エノール互変異性化とは対照的に、この反応に含まれている環状アセタール類の開環体との平衡に関しては研究例が少なく、特に合成反応への反応に関しては未開拓に近い状態であった。そこで本研究では、このin situジエノールエーテルをジエン成分としたDiels-Alder反応を一般性のある簡便な有機合成手法として確立することを目的としていくつかの基礎的研究を行った。すなわち、1と種々のジエノフィルの反応による一般性の検討、中間体2および3のスペクトル分光的確認に基づく機構的研究、反応に対する溶媒および添加物の効果の検討、置換体を用いた反応のレギオ選択性の検討、4-置換2-シクロペンテノンアセタール類の分子内反応への応用、種々のエノンアセタール類を基質とした構造-反応性相関の検討、反応のジチオアセタール類への拡張、ジチオアセタール類への反応の触媒的活性化、ケテン等価体との反応に基づく選択的保護法の開発を達成した。
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