研究概要 |
我々は、ピリジニウムおよびアニリニウムハロゲン化物の水溶液について、陽イオン・陰イオンのNMR線幅を測定して、陰イオンの線幅にアンモニウム陽イオンの大きさに比例する濃度領域があることを見出し、この効果が接触イオン対の生成に起因することを示した。本研究ではこの方法を、次の1、2について研究した。 1.多酸塩基の塩におけるイオン間相互作用 (1)pKaの大きい二価の分子(ビピリジル、1,10-フェナントロリン)については、一価の塩基と同様の結論を得た。 (2)pKaの小さい二価の分子(キノキリリン,フタラジン,ナフチリジン)は、完全にはイオン対を形成できずアニオンの補正線幅は対応する一価の塩基(キノキリリン,イソキノリン)よりも狭くなる。 (3)ジアジンについてはpKaが小さいにもかかわらずピリジンと同様な結果となった。また、分子を大きくしたアルキル置換ジアジンでもイオン対の形成が可能であり、塩基分子の形もイオン対形成に関与している。 この方法により有機アンモニウムイオンとハロゲン化物イオンとの高濃度領域での接触イオン対の生成について知見をさらに深め、水溶液のミクロな構造に関して知ることができた。 2.多核NMR法のその他の相互作用系への応用 p-,m-置換アセトアニリド、ベンズアニリド、トリフルオロアニリドの^<15>N-NMR化学シフトに対する置換基効果を検討し、分子中のπ電子系の分極の問題や電子的相互作用の解明にも拡張して応用する。
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