研究概要 |
本研究は、超不安定化合物チエピン(1)およびチエピンオキシド(2)の性質を、合成的(母体および単純誘導体の合成)・理論的(非経験的分子軌道法)に、解明しようとするものである。 1.(チエピン)遷移金属錯体(3):母体チエピンの有力前駆体として、チエピン錯体(3)の大量合成を行った。現在約300mg程度の純品を得ている。(3)のX線結晶構造解析を予定している。 2.(チエピンオキシド)遷移金属錯体(4a,4b,4c):錯体(3)のmCPBA酸化により三種のオキシド錯体(4a,4b,4c)を得ている。科研費で購入した中圧液体クロマトが、これらの異性体の分離に、大いに役立っている。錯体(4a,4b)は、純品を得ることができた。しかし、(4c)は、容易に(4b)との平衡混合物になってしまう。(4c)の単離が、今後の課題として残っている。 3.分子軌道計算(ab initio 3-21G^*):チエピン、チエピンオキシド、チエピンジオキシドの熱的安定性の差をMOから検討した。速度論的安定性(チアノルカラジエン型化合物への原子価異性反応の活性化エネルギー)の計算結果は、「チエピンオキシドの方が、チエピンよりも更に不安定で有る」ことを示めしている。 4.極低温マトリクス光分解反応:遷移金属錯体(3、4)の極低温光分解反応に先立ち、予備実験として、以下のジアゾ体の極低温光分解反応を検討した。これらのジアゾ体の大量合成と異性体分離を行った。この異性体分離に於ても、中圧液体クロマトが、大きな威力を発揮した。現在、三重大学の協力により、極低温(10K)での光反応を試みている。
|