研究概要 |
研究実績の概要を次の4点にまとめた。 1.1、8、9、-(トリスアリールセレノ)アントラセン(1)の合成を目的としてその前駆体となることが期待される1、8-(ビスアリーレセレノ)アントラキノン(2)および1、8-(ビスアリートセレノ)アントラセン(3)を合成した。2および3を出発としていくつかの方法により1の合成を試みた。現在のところ高収率で1を合成できる経路を確立するには至っていないが、近日中に有効な手段が確立できるものと期待される。 2.新たに購入したCV(サイクリックボルタンメトリー)を用いて一連の有機セレン化合物の酸化還元電位の予備的な測定を試みた。 3.本研究を効率的に行う上で重要な役割を果たすことが期待される1、8-(ビスアリーレセレノ)ナフタレン(4)の合成を行い、そのハロゲン付加体の構造を調べた。その結果、4の四臭素化体は(TB,MC)構造であることが確認された。一方、4の四塩素化体は(TB,TB)構造であったが、二塩素化体では塩素が分子内の両セレン間で速やかに移動することを見い出した。また1、8-(ビスメチルセレノ)ナフタレンとヨウ素とのC-Se結合開裂反応を詳しく検討した。 4.セレニドのハロゲン付加体(TBおよびMC)における結合の特性を分子軌道法を用いて詳しく検討し、MCにおける結合においてもTBにおける結合と同様に3c-4e結合として表現できることを明らかにした。その結果、有機セレニド等のMC付加体ではハロゲンからセレン原子への電荷のバックドネーションが重要であることが確認できた。
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