溶質分子と溶媒分子(実質的には、それらの置換基)の形が互いに類似している時に、化学反応の選択性は、高くなることが示唆されている。この「形の類似性効果」を利用し、これまで以上に“精密"で新しいタイプの選択性制御の方法を開発するために、一対の会合性チオールIとII(R^1とR^2はそれらの置換基)の酸素酸化反応の選択性を、溶質(会合性チオール)分子-溶媒分子間の形の類似性が、どのように変化させるかを検討した。 1.R^1がフエニル基でR^2がn-ペンチル基の場合について、20、35および50℃で選択性を調べた。メタノール-n-プロピルアルコール(メタノールのモル分率=0.50)中では、選択性は、35℃の時に極大になった。これに対して、メタノール-イソプロピルアルコール中では、選択性は、温度と共に単調に増大した。これらの結果から、R^2(会合性チオールIIの置換基)とプロピル基(プロピルアルコールの置換基)の形が類似している時に、選択性は、温度に対して極大を示すことが示唆された。 2.R^2がイソペンチル基(R^1=フエニル基)の場合について、35℃で選択性を調べた。 (1)炭化水素-水-n-プロピルアルコール混合3成分系(炭化水素のモル分率=0.50、水のモル分率=0.10)中においては、炭化水素がシクロヘキサン、n-ヘキサン、イソヘキサンの順に、選択性は増大した。しかし、炭化水素がn-オクタンの時の選択性は、イソヘキサンの時の選択性とほとんど同じであった。 (2)水-n-プロピルアルコール(水のモル分率=0.10)の混合2成分系中においては、選択性は、上述したいずれの混合3成分系中の場合よりも低くなった。これらの結果から、R^2と炭化水素の形が類似している時に、選択性は、高くなる傾向のあることが明らかになった。
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