本研究ではまず、種々のランタノイドトリフラートを触媒とするシリルエノラートのヒドロキシメチル化を検討した。その結果、いずれのランタノイドトリフラートを用いた場合も反応は円滑に進行し、特にイッテルビウムトリフラート(Yb(OTf)3)は、安価で優れた活性を示すことがわかった。反応はわずか1mol%のYb(OTf)3の存在下でも円滑に進行し、種々のシリルエノラートに適用可能である。反応は高い位置選択的を示し、立体障害の大きなシリルエノラートを用いても、収率よく目的とするヒドロキシケトンを得ることができた。 ランタノイドトリフラートは、ホルムアルデヒド以外の通常のアルデヒドとシリルエノラートとのアルドール反応の触媒としても有効である。反応は水-THF中、室温で円滑に進行する。アクロレイン、クロロアセトアルデヒドといった水溶性のアルデヒドは水溶液のまま反応に用いることができる。また、通常のルイス酸条件下では用いることの難しいフリーの水酸基を有するアルデヒドや窒素原子を有するアルデヒドを用いた場合も反応は円滑に進行し、対応するヒドロキシケトンを収率良く得ることができる。 一方、ランタノイドトリフラート触媒は、有機溶媒中でも用いることができる。さらに、マイケル反応、Diels‐Alder反応においても有効に作用する。また、Friedel‐Craftsアシル化反応の有望な触媒としても期待される。反応はわずか5mol%のランタノイドトリフラート触媒の存在下でも円滑に進行し、目的とする芳香族ケトンが高収率で得られた。
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