研究概要 |
メチル4,6-0-ベンジリデン-alpha-D-グルコピラノシド(グルコシド)-アミン錯体の構造についての知見を得、選択性制御の機構を明らかにするために、以下の検討を行なった。 1.アシル化反応の選択性とアミンの構造との関係を明らかにするために、各種のアルキルアミンを用いてグルコシドの無水安息香酸によるベンゾイル化反応の経時変化を追跡した。その結果、アミンのアルキル置換基の立体効果が反応速度および選択性に影響を及ぼすことが示された。 2.ピリジンを触媒として用いて1.と同様の反応について詳細に反応動力学を検討した。その結果、トリエチルアミンの場合とは異なり、グルコシドとピリジンとの1:1錯体を中間体として反応が進行することがわかった。 3.反応中間体であるグルコシド-アミン錯体の構造を明らかにするために、グルコシド濃度を0.0177mol/lとし、トリエチルアミン濃度を0.008〜0.8mol/lに変えて、重クロロホルム中35℃および50℃でプロトンNMRにおける化学シフトを測定した。その結果、グルコシドがその2位および3位の水酸基でトリエチルアミンと相互作用して、錯体を形成することが示唆された。 以上の結果は、グルコシドのアシル化反応の中間体が、グルコース誘導体とアミン触媒とからなる錯体であるという知見をさらに裏付けるものである。また、錯体形成にはアミンの塩基性と共にアルキル基の立体効果が影響を及ぼすことから、アミンの分子構造を制御することにより選択性の制御を行える可能性のあることがわかった。
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