研究概要 |
抗PAF(血小板凝集抑制因子)作用は、プロスタグランジンのそれと並ぶ種々の興味ある薬理活性を示し、喘息、リウマチ病などへの医薬として臨床適用が期待されていることから、近年大きな注目を集めている。本申請者は、きわめて優れた活性と選択性を示すチアゾリジン-4-オン系抗PAF剤(アンタゴニスト)の合成化学的研究を進めている。すでにチアゾリジン-4-オンのcis体,trans体をある程度自在に作り分ける立体選択的合成法を開発し(cis/trans=4/1〜1/20)、これを用いて幾つかの光学活性体の合成を行い、2R体が活性本体であるという従来剤にない興味ある結果を得ている。しかし、現在の方法では立体選択性が不十分でより高活性と期待される5-位が長鎖の類縁体の高光学純度チアゾリジン-4-オンの薬理試験へ向けての充分量の供給は困難である。本申請者は、以下の2点を見いだした。 1.この合成において、alpha-メルカプトカルボン酸シリルエステルを基質とし、アルミニウムアルコキシド・チタンアルコキシド、またはピペリジンを触媒として用いると、trans,cis比いずれも従来より高い立体選択性を発現することを見いだした(cis/trans=15/1〜1/50)。 2.この方法に基づき、目的の光学活性体の合成を行い、薬理試験に供し、未だ未開拓でもっとも注目すべき点の一つである5-位の構造-薬理活性相関を明らかにできた。つまり、5-位の絶対配置は、あまり活性分離を示さなかった。これは5-位が長鎖の類縁体が5-位メチル体や5-位アリール体と異なりリレセプターとゆるい結合をしていると想像される。
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