研究概要 |
抗PAF(血小板凝集抑制因子)作用は、プロスタグランジンのそれと並ぶ種々の興味ある薬理活性を示し、喘息、リウマチ病などへの医薬として臨床適用が期待されていることから、近年大きな注目を集めている。 本申請者は、きわめて優れた活性と選択性を示すチアゾリジン-4-オン系抗PAF剤(アンタゴニスト)の合成化学的研究を進め、立体選択的合成法を開発し^<1)>、これを用いて幾つかの光学活性体の合成を行い、2R体が活性本体であるという従来剤に無い興味ある結果を得ている^<2)>。また、光学活性チアゾリジン-4-オンを合成した技術を活かし立体化学的性質を調べ位置選択的エピ化、trans選択的アルキル化も明らかにした。さらにα-メルカプトカルボン酸シリルエステルを基質とする高立体選択的合成法も見い出した^<3)>。 今年度、本申請者は、チアゾリジン-4-オンの合成でにおいて、各種α-メルカプトカルボン酸シリル誘導体を基質とし、テトラブチルアンモニウムフロリドを触媒に用いると環化反応を著しく促進することを見いだした^<3)>。さらに、ヒドラゾンと類型の反応が進行し、アリールヒドラゾンからは3-アニリノチアゾリン-4-オンが、メチルヒドラゾンからは、新規ヘテロ環/パ-ヒドロチアジアジンが得られることを見い出した^<4)>。 これらは最近、当研究室で注力しているケイ素-ヘテロ原子の効率的活性化に基づく有用有機反応^<5-7)>の一つの展開でもある。 以上、本申請者は、抗PAF活性チアゾリジン-4-オン(アンタゴニスト)の合成化学的研究を行い、当初の目的はほぼ達したと判断している。その成果はFull paper 2報^<3,8)>(計15ページ)に詳しく述べてある。 なお、これらの研究を契機に、チアゾリジン-4-オン構造の核酸S-isosterやオキシゲナーゼ阻害剤の研究が活発になってきており、チアゾリジン-4-オンは一般的に重要なヘテロ環化合物になりつつある。 1)Y.Tanabe,et al., Tetrahedron Lett.,32,383-386(1991).2)Y.Tanabe,et al.,Tetrahedron Lett.,32,379-382(1991).3)Y.Tanabe,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,in press(1995).4)田辺ら、日本化学会春季年会(1995)発表予定 5)Y.Tanabe,et al.,Tetrahedron Lett.,35,8409-8412(1994).6)Y.Tanabe,et al.,Tetrahedron Lett.,35,8413-8414(1994).7)Y.Tanabe,et al., Chem.Lett.,2275-2278(1994).8)Y.Tanabe,et al.,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,in press(1995).
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