Ga-Mn金属-金属結合ポルフィリン錯体の合成は、In-Mn系で用いた金属カルボニルアニオンとの反応ではうまく行かなかった。高沸点溶媒中でMn_2(CO)_<10>とGaポルフィリンを環流することによって、目的とする化合物を得た。同族のIn-Mn金属-金属結合ポルフィリン錯体とは違って、Hyper Classの性格はあまり出ていなかった。Gaの方がInよりもイオン性が大きく、さらにサイズの違いもあるため、Hyper Classの性格がかなり小さくなってしまっていると考えられる。このGaとInの相違は、合成条件の違いにも現れている。得られたGa-Mn金属-金属結合ポルフィリンはかなり安定な化合物であり、容易に精製することができる。赤外吸収スペクトルのカルボニル領域の吸収はIn-Mnのものとは幾分異なっているが、Gaが小さいためポルフィリン平面からのずれが少なくなったことを考えると、妥当な結果であると考えられる。InとGaの違いで最も興味が持たれるのが電気化学である。本研究で導入した回転電極などを用いて電気化学測定を行った。その結果を簡単にまとめると、酸化還元電位はIn-Mn金属-金属結合ポルフィリンに比べてあまりシフトしていないが、還元による化合物の分解がIn-Mn系に比べて起こりやすくなっていることの二点である。Gaのイオン性の大きさは酸化還元挙動にはあまり大きな影響は持たないものの、金属-金属結合の安定性には影響することを示している。本研究で開発したGa-Mn金属-金属結合錯体は十分な安定性を持ちながら、光照射・還元による金属-金属結合の開裂が可能であるため、新しいPDT試剤と十分なりうる化合物である。
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