研究概要 |
ヘキサアンミンイリジウム(III)とヘキサアンミンロジウム(III)の塩化物、臭化物、酢酸塩、〔M(NH_3)_6〕X_3(M=Ir,Rh;X=C1,Br,CH_3COO)、を合成し、その0.5mol dm^<-3>濃度の水溶液についてX線回折測定を行った。回析データは通常の処理を行った後、同形置換法により中心金属原子まわりの動径分布関数D^M(r)を求めた。いずれの溶液においても、配位子として金属に結合しているアンモニア分子(アンミン配位子)の窒素原子は金属から2.11Åの位置に、水素原子は2.60-2.64Åに明瞭なピークとして現れ、それぞれに対する理論曲線とよく一致した。この結果から、また、∠M-N-Hは115°-119°となっていることが分かった。D^M(r)曲線の3.6-5.0Å領域に第二配位圏の構造を反映していると考えられる大きなピークが存在する。酢酸塩水溶液についての理論解析から、アンミン配位子に接触して二種類の水和水分子が存在することが明らかとなった。第一の水分子は金属から4.06Åに8.0個、第二の水分子は4.56Åに5.9個と解析された。4.06Åの水分子は、N(NH_3)-O(H_2O)間距離を2.8-2.9Åとすると∠M-N-Oは107°-111°となることから、アンミン配位子のN-H結合軸方向に水素結合した水分子と判断した。また、その個数から、この水分子は正八面体型錯体の各面方向に平均一個ずつ存在するものと推定した。一方、4.56Åの水分子はその数と距離から、M-N結合軸方向に存在するものと考えられた。塩化物水溶液についての解析は、酢酸塩の結果を参考にして行った結果、4.07Åに第一の水分子が7.0個、第二の水分子は4.59Åに6.0個存在し、更に、塩化物イオン1.0個が、第一の水分子1個と入れ換わって4.33Åにアンミン配位子と水素結合して存在することが明らかになった。
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