1.各種アルコール中に単独に溶解した水の挙動を密度、超音波音速度の測定から検討した。これらの溶液物性は主として水-アルコール間の水素結合形成が大きな要因であるが、温度依存性を詳細に検討すると、低温では特に低級、または枝分かれアルコールと水と相互作用に幾つかの異常性が観察された。 2.一方、アルコール希薄水溶液について調べると、不思議なことにアルコール中に単独で存在する水の挙動と極めて類似した現象が見出された。この事はまだ充分に解明できていないが、少なくとも従来説明されていたような疎水性相互作用に基づくものでないことは確かである。このような現象は過冷却状態では更に顕著に現れるものと思われ、不凍糖蛋白による凍結防止作用との関連を検討する必要がある。 3.各種アミノ酸およびそれらのエステル誘導体について希薄水溶液の体積挙動を検討した。蛋白質のモデル化合物としては、両性電解質であるアミノ酸よりも、エステル誘導体の方がより適切であることが、これらの部分モル体積、部分モル圧縮の結果からも示唆される。 4.ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体の水溶液の密度、音速度、粘度測定を行った。いずれの場合も常温付近での転移現象が見出された。これは、高分子による水和現象がある温度で急激に変化することを意味しており、また、転移温度は高分子の疎水-親水バランスによって決定されることが推察される。その詳細は明らかではないが、近年知られるようになった蛋白質の低温変性とも関連して、さらに検討を要する問題である。
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