研究概要 |
ミオシン(M)分子の機能と構造との関連、特に2つの頭に違いが有るか否かに関して有効な知見が得られるものと期待されるピレン系蛍光プローブについてMとの相互作用を詳しく検討した。一方、Mの2つの頭は蛍光消光剤として作用するトリニトロンゼンスルホン酸に対する反応性(TNP化)に違いがあることを明らかにした。 1.非共有結合性蛍光プローブ、ピレン(P)及びピレンスルホン酸(PS)ナトリウムとMとの結合定数を蛍光スペクトルとN_2レーザー励起蛍光寿命測定とから、20℃、pH7.0緩衝溶液中、それぞれ、4.9×10^5、1×10^7M^<-1>と推定した。 2.ヨウ素イオンによる蛍光消光実験から、Pはその約65%以上はM内部の消光されにくい疎水性領域に取り込まれ、PSは殆ど100%M表面の消光されやすい部位に存在する事を明らかにした。消光曲線の経時変化は、変性に伴う疎水性領域の増加を示唆する。 3.共有結合性蛍光プローブをMの頭部のSHI基やリジンのε-NH_2基に特異的に結合させた。Mとプローブの結合比を明らかにし、各種ATPase活性を測定した。その結合体に対して、ATPやPPi添加によるMの構造変化に伴う蛍光挙動の変化を観測した。 4.ニワトリ骨格筋の軽鎖が異なる2種のミオシンに対して、それぞれ、PPiの有無(±PPi)に於けるTNP化の反応性の違いから4つの頭部、Sl(aA),Sl(aB),Sl(bA),Sl(bB)に分別される事を明らかにし、2種のミオシンはそれぞれ反応性の異なる2つの頭を持つとする“Two isomyosins with nonidentical heads"説で良く説明できる事が分かった。
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