研究概要 |
錯体1__-の側鎖Rがn=1〜12のものを合成し、側鎖の鎖長が液晶性に及ぼす効果について検討した。その結果、n=2〜12のPd錯体が広い温度範囲でディスコティック液晶相のD_<hd>相を持つことが偏光顕微鏡、加熱X線回折より明らかになった。つぎに、Pt錯体1__-の側鎖Rがn=4〜14のものを合成して検討した。その結果、Pt錯体はPd錯体と比べてさらに広範囲な温度領域で同様なD_<hd>相を示すことが明らかとなった。以上のように、当初に計画した目的どうりPd,Pt錯体の合成が達成された。ところが、この期間、現有のリガク社製示差走査熱量計が老朽化故障し、事実上測定不可能となったためやむをえず、新規に示差走査熱量計を本科学研究費を利用し購入した。つまり、合成はかなり進展したが、その合成物の熱物性の測定できない状況に長期陥っていたわけである。この新規な示差走査熱量計が本年度9月に納入されたので、合成が完了したM=Pt,Pd錯体のカラムナー液晶性の確認を、この示差走査熱量計および、現有のメトラー社製ホットステージ付き偏光顕微鏡、自作の加熱試料台を取付けたリガク社製X線回折計を用いて行なった。これらの長鎖置換金属錯体は、合成の段階でNi塩に比べて、Pd塩やPt塩が有機溶媒に溶解しにくく、対応する金属錯体が低収率でしか得られないという問題点があった。特に長鎖がより長くなると、配位子がより非極性となり、さらに合成がむずかしくなった。Pt錯体でn=16以上のものは、この問題点のため合成できなかった。しかしながら、n=2〜14のものは溶媒を工夫することにより合成に成功したことは画期的なことである。これらの研究成果の一部は、本年度東京で開かれた第19回液晶討論会にて発表した。また、Pd錯体については、Bull.Chem.Soc.Jpn.誌93年12月号に成果が2報文として公表された。
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