当該年度の研究目的は1)水銀表面および水面において水溶性蛋白質の二次元結晶化に成功する事、2)その結晶化膜を用いて二次元構造を明らかし、水中におけるその表面間相互作用力を調べる事であった。 1)では、昨年度に開発した簡易型水銀槽を用いて、フェリチンの二次元結晶化を試み、その作製に成功した。同時に水面上での結晶化も行ない、これも成功させ、その成果は論文発表された。とりわけ、水面上での結晶化は新装置としての展開につながり、蛋白質のみならず、両親媒性物質の二次元密度と結晶化制御にも応用される装置として完成品化への開発も進められている。 2)では、水銀および水面で作られた両二次元結晶化膜はその結晶性と内部構造において極めて類似したものである事がわかった。この結晶化膜を劈開清浄雲母表面に移しとり、この表面間の水中における相互作用力を表面力測定装置により調べた。その結果、遠距離では微小な相互作用は観察されなかったが、近距離では極めて大きな相互作用力の発生が認められた。この力は二表面の結晶化膜の重畳により発生する立体障害力である事が示唆された。 これらの研究に関連して、電子顕微鏡的に新構造観察法を適用した超薄膜の構造研究、今後の研究に結晶化試料として用いる予定の、生体物質の水溶液中と表面における基礎物性の評価、そしてその水中における分散構造が調べられ、これらも論文発表された。
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