研究概要 |
本研究の目的は、d-遷移元素と希土類元素とを組み合わせたd-f元素系二核錯体を設計・合成することによって,(1)二核錯体による有機基質の特異的取り込み、(2)d-f金属イオン間の磁気的相互作用に基づいた錯体強磁性体構築素子としての可能性,(3)ユウロピウムなどを用いた光機能性錯体としての可能性,などについて調べ,希土類の特徴を発揮できる錯体を追求することである。平成6年度では、以下のような二核錯体を合成し,それらの性質を調べた。 その結果,錯体(1)については,これまで報告したd-f元素系二核錯体と同様に,『アミノアルコールなどの基質では窒素原子はd-遷移金属サイトに,酸素原子は希土類サイトに特異的に結合して取り込まれる』,『銅(II)とガドリニウム(III)との間には強磁性的相互作用が弱いながらも明らかに見られる』,『ユウロピム(III)の蛍光が二核錯体を形成することによって著しく弱くなる』ことなどがわかった。錯体(2)については,パラジウム(II)は典型的にソフトな酸であるので,現在,種々の有機化学反応に対する触媒としての有効性を調べている。また,これまでは,銅(II)あるいはバナジル(IV)とガドリニウム(III)との間の磁気的相互作用についてのみ調べてきたが,今後は,ガドリニウム(III)以外の希土類との相互作用について調べたい。
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