研究概要 |
(1)液晶相重合を利用することにより合成・単離されたジアセチレントリマーを、ポリビニルアルコールの高分子フィルムに埋め込んだ試料を作成した。この試料を光照射、または90℃に加熱することにより、シクロプロペン環が開環して生成したと考えられるビラジカルの3重項種(D=2.53×10^<-3>cm^<-1>,E=4.1×10^<-4>cm^<-1>)のESRによる検出に成功した。またスペクトルの温度依存性より、このジラジカルは、熱励起3重項種であることが明らかになった。 (2)ビラジカルの構造に関し、横浜国立大学の永瀬助教授との共同研究により、GVB法による理論計算を行い、安定な配座およびスピン分布についての知見を得た。この計算により求められたスピン電子密度の結果は、ESRスペクトルより得られた零磁場分裂パラメーターをよく説明できる。 (3)単離されたトリマーを、モノマーが形成する液晶性反応場にもどし、モノマーと共に加熱したところ、ペンタマーや高次オリゴマーが生成することを見いだした。このことより、トリマーがリビングオリゴマーとみなせることが明らかになった。 以上、液晶相重合により単離されたトリマーは、開環して生成するビラジカルと平衡にあること、トリマーはモノマーからなる液晶性反応場中で重合反応を再開する点でリビングオリゴマーと見なせることを明らかにした。この2点は、秩序場におけるジアセチレン重合の機構解明の上で重要な知見といえよう。
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