赤外部検知のレーザー光分解装置の製作とその改良を行った。Nd:YAGレーザーからの励起パルスによる熱レンズ効果が赤外部検知では著しく、励起パルスのエネルギーは20mJ以下にせねばならないことがわかった。そのため、伝送速度を速める等の改良を加え、100回程度の積算によりS/Nを上げた。性能のテストも兼ねてCr(CO)6とフェナンスロリンの光反応の中間体につき測定し、基準振動とZINDO-MOの計算で中間体の構造を確定した。 赤外部検知のレーザー光分解に付き物の疑似吸収を克服でき、少なくともCO伸縮領域で信頼できる時間分解スペクトルを得られるようになった。同時に、C-H伸縮振動領域での測定にはまだかなりの改良が必要であることも明らかになった。基準振動から求めた力の定数とZINDO-MOの計算による結合次数の相関からの立体配置の決定は金属カルボニル錯体中間体の構造推定に新しい有力な手段を与えることになる。
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