研究概要 |
本研究は、アフィニティー相互作用をキャピラリー内で展開させることによりキャピラリー電気泳動法(CE)の高分解能化をはかろうとするものである。この目的を達成するために物質間の様々な相互作用について電気化学的な側面からの検討を行うとともに、それらの相互作用のCEへの適用を試みた。銅(II)-シクロヘキシル酪酸塩で修飾したカーボンペースト電極は、アミノ酸やリポ酸を銅(II)との錯形成反応によって濃縮でき、これらの生体関連物質を電気化学的に高感度に検出することができた。また銅(II)-ポルフィリン錯体で修飾した電極は糖を選択的に電極上に濃縮でき、糖を電気化学的に高感度に分析できることを示した。タンパク-リガンド相互作用のモデルとして、アビジンとビオチンとの相互作用について検討した。電気化学的に活性な部位を持つビオチン誘導体を調製し,アビジンとの結合によって変化する電極活性部の電極応答を追跡することによって、ビオチンの電気化学的アッセイ法開発の可能性を示すことができた。さらに土壌の産生する腐食物質と金属イオンとの相互作用についても検討し、フミン酸の重金属イオンとの錯形成能力がイオン強度の増加とともに増すことを明らかにすることができた。キャピラリー電気泳動については、キャピラリー壁上に形成させた陽イオン界面活性剤のヘミミセルを利用した有機アニオンの電気泳動分離について検討した。有機アニオンの移動度はこのヘミミセルとの相互作用に大きく影響を受け、この効果を利用して有機アニオンの分離を達成することができた。また生体内に広く分布するビタミンの一つであるナイアシン誘導体のCEによる分離について検討した。泳動バッファーのpHを下げピリジン環の窒素原子上にプロトンを付加すると、その酸解離平衡に基づいて泳動速度が制御され、13種のナイアシン類の分離が達成できた。さらにSDSミセルとの分配平衡を用いることによって、pH9の条件下でも20分以内で13種類のナイアシン類の完全分離が達成できた。さらに、これらナイアシン類のSDSミセルとの分配係数を求めることができた。以上のようにアフィニティー相互作用をキャピラリー内に導入することでCEにおける分解能が改良されることを示すことができた。
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