1.先年度の検討で最も優れた性能を示したZr(IV)を含む高分子錯体について、フッ化物イオンの吸着反応の機構を検討した。その結果、強酸性ではイオン交換的に、弱酸性では付加的にフッ化物イオンが高分子相に吸着することが分かった。吸着されたフッ化物イオンは、弱アルカリ性で水酸化物イオンとの混合配位子錯体の生成によって脱着し、更に酸によって出発の錯体へと再生される。 2.バッチ法による吸着実験では、10^<-4>moIdm^<-3>レベルのフッ化物イオンを定量的に吸着でき、他のハロゲン化物イオンやアルカリ及びアルカリ土類金属などの陽イオンの影響をほとんど受けないことが明らかとなった。しかしながら、10^<-5>moIdm^<-3>以下では吸着率が低下した。 3.この点を改善するために流れ系を用いる吸着を試みたところ、少なくとも10^<-6>moIdm^<-3>のフッ化物イオンを93%以上の高い一定の比率で吸着させ、100倍以上に濃縮することが可能となった。 4.ヨウ化物や臭化物イオンの吸着体となる高分子錯体の調製法及びその性能を評価した。キレート能を有する親水性高分子に対して、Hg(II)は-Iog[H^+]>2で一定の吸着量を示した。得られた高分子錯体のpH滴定の結果、見かけのpkaが5.5の一段のプロトン解離反応を示し、この酸塩基反応に伴なって当量点では90%のK^+が高分子中に捕捉されることを見い出した。この高分子錯体は広いpH範囲でハロゲン化物イオンを定量的に吸着するが、これを脱着する条件が現時点で見つかっていない。
|